先般9月11日に 東京電力の吉田昌郎所長は責任を追及されるべき立場 という記事を書いた。
朝日新聞騒動を受けて急いで書いて、以下のような内部告発の事例を紹介した。

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吉田所長と正反対の、「隠れた英雄」は世界中にいる
逆に、内部告発をして、いじめられ、そうやって会社を去った人間は何人もいる。
かつて、巨大航空機メーカーのある技術者は、就航前に空中爆発の危険性への警鐘をならし、内部告発をして、会社を解雇され、生活の糧を失った。たが、それでも彼は粘り強く世間に訴えた。結果二階建て巨大ジャンボ機は内部告発者の指摘を改善して1年遅れで就航した。そういう人々は沢山いる。
一方、吉田氏は電力会社に居残った側の人間だ。自分の管理する発電所への批判を省みて改善改革の努力もしていない。仕方なく作業しただけだ。何を偉そうに「あほみたいな国、あほみたいな政治家ども」などと言っているのだ。その「アホみたいな政治ども」にあなたの給料の支払元である電力がワイロを送りまくって、その電力と買収された政治家が、交付金と言う名の麻薬を貧しい村にバラ撒いて心を狂わせ、強行建設していった原発が、この吉田氏の職場だ。その原発の所長で厚待遇に甘んじて、なにも根本的改善をはからなかった自分への深い自覚がまったく見られないのは、今回再掲された吉田調書の内容にしても同じ。「あほな政治家と一緒にコップのなかでぐるぐる回っている」だけだ。
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記憶があいまいであったため、固有名詞を記載しなかったが、最近は便利なサイトがある。
NHK BS世界のドキュメンタリー「内部告発~組織と闘う人びと~(再)」
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/081203.html
再放送はとうの昔に終わっているようだが、内容のサマリーだけは見ることができる。四つの事例に限っての紹介。(残念ながら日本の事例は紹介されていない。内部告発さえ隠すから取り上げようがなかったか?)
実際には、これ以外にも、全米タバコ訴訟絡みでのブラウン&ウイリアムソン社(現British American Tobacco Plc、LSE: BATSに吸収)のジェフリー・ワィガンド博士による内部告発、フィリップモリス社のビクター・デノーブル博士、三菱自動車の23年間(1977-2000)もの長きに亘るリコール隠しを暴いた匿名の内部告発者、米国フォードモーターの「フォード・ピント事件」などの意図的欠陥隠しとその訴訟での懲罰的損害賠償命令、大手電機産業を中途退職して告発する原子炉メーカーの技術者(東芝→後藤政志氏小倉志郎氏、/日立→田中三彦氏)や、東京電力社員・木村俊雄氏の告発(東電のデータ改ざんなど国との一体化等を暴露)など至るところに、決意を固めて行動する勇気ある幾人もの内部告発者の姿を見ることができる。
北京空港のAIRBUS A380-800先般触れたのは、4番目のエアバスA380の一件だった。ちなみにこの内部告発は同型機の就航を数年間も遅らせる重大な影響を与えた事件だが、ウィキペディアのA380解説に、この内部告発に関する記述は無い。
この番組は、日本の番組ではない。フランスのARTE(独仏共同出資のテレビ局:1992年開局)とZadig プロダクションの共同制作。エアバス社もフランスの航空宇宙系大企業であれば、それへの内部告発を国際的に発信したのもフランスの放送局。内部告発を個人の主体的行動としてきちんと社会的に評価できるマスコミの矜持を示したものといえよう。

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BS世界のドキュメンタリー   内部告発 ~組織と闘う人びと~ (再)

●巨大企業エンロンの不正経理の調査を訴えた元副社長
2001年夏、当時エンロン社の副社長だった女性が、会社が組織ぐるみで巨額の負債隠しをしていることを知り、ケネス・レイ会長にメールを送った。しかし結局、手は打たれず、エンロン社は経営破綻。捜査の過程で元副社長のメールが発見され、会長があらかじめ不正を知っていたことが証明される。
●水道料金の過大請求を突き止めた水道会社社員
フランスでは水道事業の80%が民間企業によって運営されている。大手水道会社のヴェオリア社に30年間勤めてきた男性は、自治体との水道料金の契約が不透明であり、過大請求だと訴え、解雇された。男性は弁護士や会計検査官の協力を得て水道料金に関する情報開示を求め、フランス各地の都市で過大請求が行われてきたことを暴く。
●核施設のずさんな安全管理と警備を告発した担当者たち
原爆を作るためのマンハッタン計画が進められたアメリカ・ニューメキシコのロスアラモス国立研究所。大量のプルトニウムがつまったドラム缶が無防備に放置されており、万が一、航空機の墜落事故や落雷、山火事などに遭うと大惨事を引き起こす可能性がある。また、のべ350万ドル相当の国家資産が盗難されたことを隠蔽し、紛失として報告されていることを暴いた関係者たちは脅されたり、解雇されたりしている。
●旅客機開発の安全検査ミスを指摘した技術者
エアバス社の巨大旅客機A380の開発中に、機内の気圧を保つ与圧システムに必要な安全検査が行われていないことを突き止めた技術者。しかし2004年当時に、この事実を告発すると、解雇され、起訴される。それでも彼は、仕事もなく、社会から無視されながら孤独な闘いを続けたが、2006年になってようやく、エアバス社は義務づけられた与圧システムの安全検査の実施を決断。A380の完成が2年遅れることになった。
●情報機関の盗聴を暴いた電話会社社員の運命
2006年6月、イタリアで一人の男性が橋から身投げをして死亡。電話会社で働いていたその男性の遺族は彼の死を謀殺だと主張する。男性は情報機関による大規模な盗聴が行われていたことを内部告発し、事件の直前には「尾行されている」などと身の危険を家族に訴えていたという。

番組は、職を失ったり、報復の危険に遭ったりという不利益を覚悟の上で、「内部告発」という正義を全うしようとした勇気ある人々の証言をつづる。

原題:On the Angel’s Side  制作:ARTE / Zadig Pro (フランス 2007年)
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内部告発の事例は、大から小まで沢山ある。そして告発者の多くは原因者から徹底攻撃され組織を去ることが多い。だが、それでもやめないと決意した人びとの情念が、社会を揺さぶり、改善し、多くの人びとの頭上に現れた危険・不正・腐敗を未然に防いできた。そういう事実を忘れ去り、そのような人々の辛苦に想いをはせる事ができなくなった時、そして世界第2番目の巨大事故を引き起した原発所長の責任さえ追及・問題視する人がいなくなった時、多くの人が享受するシステムは再び牙をむいて、時と場所と形を変えた大量殺人を実行するだけだ。そして、原因は過去形で語られ、評論家の数秒間の嘆息との後、幕引が始まる。
「決して癒されない、消せない傷」が社会から隠蔽されていく。問題の本質に切り込まず、スルーさせ、「お咎めなし」の無責任を放置させる、悪が現世の利益を保全するためのプロパガンダ技術だけが洗練されていく。デマゴーグが跋扈を始める。このスパイラルが回ることで急速に「病んだ国」ができあがる。