【実質GDP二期連続マイナス】
本日17日、実質GDPの速報値でマイナス1.6%という深刻なデータが出た。当初、エコノミストの予想値はプラス2%台だったが、どう目をこすって見ても、頭にマイナス記号がついている。
補正予算も効果なし。黒田バズーカも効果なし。日銀総裁を意のままに操って炸裂させた異次元緩和で日経平均を17000円台まで誘導しても「好循環」など生まれるわけがない。GPIFのポートフォリオ組み換え期待も、株高には寄与しても経済成長では完全に空振りだ。
マイナス成長値は、この間の経済政策が大きく失敗しているということだ。米国で効果が終了したQEを猿まねしただけの金融政策、そのイミティブイミテーション(他人を真似てコピー商品をつくるだけの愚策)の実態は当初からわかりきっていたことだ。http://morinaga-hiso.blog.jp/archives/1011181384.html

経済が失速し、墜落寸前のアラームがコックピットに大音量で鳴っている。首相は「美しい国」を声高にしたが、実際には格差がはびこり、金持ちへの媚びへつらいを煽る奴隷根性が蔓延する「醜い国」を作りつつある。

【アベノミクスの根本的イデオロギー、乞食根性煽る「トリクルダウン理論」】
「資産効果が経済を活性化することは多くの経済学者が指摘しているところです 」
安部首相は国会にて、先般もこう答弁をしていた。その「学説」とは何か?

「あなたの生活は当面よくならないけれども、お金持ちからお小遣いを恵んでもらったら、少し財布の中身が暖かくなるかもよ。」

もし、こういう期待感を煽られたら、ムッとする人も多いだろう。だが、一方で、それでも良いからお金頂戴、っていう人も多いだろう。

アベノミクスのイデオロギー的核心は後者のような「座しておこぼれを待つ期待型人間」をターゲットとした「トリクルダウン(滴り落ちる)」という「理論」だ。この説は、人間の安直で浅ましい思考方法に依拠しているので、一定の支持者を得ることができ、影響力を持ち得る。「貧乏人は金持ちにすがれ」というチマタに多い奴隷根性&拝金主義者の支持を手っ取り早く取り付けることができるのだ。トリクルダウン理論という学説をでっちあげてしまったM・フリードマンについては、政治的プロパガンダの類にすぎず、という厳しい批判がある。

【根拠無く、破綻が証明済みの詭弁】
おまけに、この
「トリクルダウン理論」、英国サッチャー政権の時代にすでに破綻が明らかとなっている。その、「投機を煽り、金持ちをより豊かにすれば、金持ちからビンボー人へお金が流れる」というトンデモ「学説」が、いまだに日本では国家の経済政策を決定する根本思想として機能しているのだから驚きだ。

この「学説」は、金持ちが金を使うとビンボー人に何周かして回ってくる、などと主張する。“ビンボー人は、金持ちの消費のおかげをうけて、少しリッチになる、だからビンボー人はずっと我慢しつづけて、金持ちが、“より金持ちになる“ことを待ち望まなければならない...”

【格差“意識”を拡大する金融政策】
こういう考え方で、朝から晩までメディアを総動員して、「株が上がった」と大喜びしてみせ、金持ち優遇策の正当化が展開されるのだから、そりゃ庶民や若年層には、会社で人よりもがんばって新しいアイディアやビジネスシーズや富を作り出そうなどという意欲はどんどん低下していくだろう。そういう芽が出ても上司が潰していくことも頻繁に起こる。
トリクルダウン理論は、「富は、人間が新しく作り出すものではなく、金融機関や行政が政策として作り出してくれる」という巨大な幻想だ。「金持ちが株で儲けて貧乏人の財布を暖めてくれる」というのだから、なんともお手軽&お気楽な思考方法だ。この理論では、資産家以外の人間の出る幕はなくなる。このイデオロギーで割り切っていくのなら、かつて、村上ファンドなどを叩く必要もなかったはずだ。いつから日本は、バブル時代のイデオロギーに舞い戻ったのだろうか?
そう、この2年くらいで “アッという間に” である。片棒を担いだメディアの責任は大きいが、メディアが大政翼賛すると、たった数年で国民の思考様式を変容せしめることができるという負の教訓があらわになった。

【政治家や官僚が経済を活性化できるか?】
アベノミクスは、一見、新自由主義で経済を論じながら、一方で大きな政府論を礼賛する無節操的折衷案だ。もちろん、実際のアウトプットは一時的な株高だけだ。
だいたい、企業組織で働いた経験をほとんど持たない(世間で普通に働く能力を持たない)議員は、企業のヒトにあたる部分の開発につなげる人材育成の重要性などを長期戦略で描く素養自体に欠けている。というか…、もともと無い。
政権交替が発生し、短期政権を経験し始めた日本が、長期的な産業政策から縁遠くなっているのも事実だ。だが、それら政治家が、利己的利害のために国民の人気取りと、それ以前の“国民を煙に巻く”プロパガンダで世渡りをしようと心に決めたら、もう実質的な亡国政治となる。
人材以外に富を生み出すものは存在しないという原理原則を忘れ、リストラと金融操作という、強者の都合優先の “権力支配優先の政治” を始めれば、生きた人間が構成する社会は悲鳴を上げるだけだ。
いくらメディアで景気の良い話を煽られても、国民は、財布の紐を閉めなくては一寸先に地獄が待っていることを一番よく知っている。サバイバル途上の国民経済の内需を簡単に拡大できるわけがない。それに、円安誘導の初頭から分かりきっているコストインフレの恐怖が忍び寄っている。
官僚主導で、財政のムダを洗い出さず、税金を垂れ流す非効率的なセクターの見直しをやめた政党政治家。国民の税金を消費して、何期か務めたら議員年金で一生が保障されるから先の憂いなど考えたこともない政治屋さんには到底理解できない実体経済の難しい世界だ。

【金持ちが寿司を食うと、庶民が潤う???】
しかし未だにメディアでは経済評論家がトリクルダウンをしつこく語り続けている。視聴者にはそれをさとられないように、巧妙に偽装している。黒田バズーカで日経平均が17000円を超えたとき、ある評論家は、景気の良いトーンを利用しつつ言葉の端で「資産効果」を口にし、「お金持ちが株で儲けるとお寿司屋さんなんかに行くでしょう、そうやってですね~...ムニャムニャ」という。局側にはもちろん「資産効果」への疑いの目などない。そもそもメディア側が「資産効果」なるものを客観的事実だと思い込んでいる。
こういった調子で、この2年間、庶民の脳みそに、「お金持ちがよりお金持ちになって、お金を落としてくれるのを待ちましょう」と上から目線の説教を注入してきた結果が、コレだ。

だがイマドキ、例え話が寿司屋? この評論家の世間知らず度合いがモロばれという感じだ。お茶の間の庶民はこの程度の話で騙せると思っている。もはや詐欺師の一種だ。
ごく一部の金持ちが株で儲けて、家族全員と親戚まで連れて一席10万円くらいの超高級寿司屋(というコトにしてあげよう)に毎日出掛けて行くだろうか。いまどきそんなバブリーな輩など殆どいない。資産の含み損がもどっても、その戻った分をそっくり消費に回す人間などいない。そもそも、含みとは、もとから実際の消費行動に回さない帳簿上の資産の多寡である。
金融商品で少し利益が出たからといって、まだ使える車を廃車にして、新車に乗り換える人間がどれほどいるだろうか? そういうケーススタディは、他人を騙して金を巻き上げて詐欺する輩には都合のよい屁理屈だが、とても社会科学の世界の話ではない。まともな資産家は、少し損失がもどったとしたら、それが分かった日だけ、こっそり、すき焼きを食う位だ。

世にある資産家への都市伝説にも似た誤解。トリクルダウンは、そういった大きな勘違いを悪用したプロパガンダだ。「資産家はきっと羽振りが良いに違いない」と思い込んでいる世間知らずの営業マンの成績が一向にあがらないのは、こういう俗説を真に受けているからだ。

【税金にたかって党生活を延命するマルクス主義系団体も同類】
一方で、「資本家権力の本質は、武力装置と徴税権だ」、とサークル内部で大風をふかす自称マルクス主義者も、なんだかんだと言いながら、実際の「民主団体」での生業では、行政にどっぷり取り入って、国民の税金や医療保険にタカり、党員生活のための「しのぎ」=貧困ビジネスを展開している。「増税不況」と毎度ピントはずれな批判に終始している彼ら自身が、大きな政府のおこぼれに群がる、トリクルダウンの実践者だ。かつて保革共同で生まれた知事が、大盤振る舞いで巨大な負債を後世に遺した事実を忘れることはできない。

トリクルダウン、滴り落ちる。要するに、「ビンボー人は金持ちの消費のおこぼれにスガれ」という御宣託だ。国民に奴隷根性を植え付け、パンと見世物を要求させて、市民を従属的臣民として管理支配を行ったローマ帝国末期の光景が蘇る。米国が格差社会になり、歪んだ社会意識を蔓延させ、犯罪が増加したのも、このような御用プロパガンダのおかげである。