市 民

森永ヒ素ミルク中毒事件は、昭和30年(1955年)に日本で発生した、森永乳業の粉ミルクによる乳幼児の大量死亡・被害事件です。 森永は、猛毒のヒ素が混入した産業廃棄物由来の第二燐酸ソーダを、製品が新鮮であるように偽装する目的で赤ちゃん用粉ミルクに添加したため、1万2千名以上の膨大な被害者を生み出し、1年以内に131人の赤ん坊が死亡するという世界最大の食品公害となりました。未だに多くの被害者が理不尽な扱いに苦しみ続けています。

2018年08月

岡山市東区災害ボランティアセンター森永ヒ素ミルク中毒事件資料館2018年定期開館日
 
7月下旬に岡山市東区の被災地に入った。当地には岡山市の砂川が流れているが、その左岸堤防が約100mにわたって決壊。2230戸が浸水した。(1569戸が床上浸水、661戸が床下浸水 浸水面積約750ha 破堤は7月7日午前1時半頃)。東区は慢性的なボランティア不足に悩んでいて、NHK岡山放送局の災害掲示板でもたびたび要請が出ていたの岡山市東区の床上浸水現場(床はぎ作業に汗を流すボランティア)で、平日、特に人手不足になりそうな日を選んで入った。案の定、その日は前日よりもさらに人の集まりが少なかったようだ。ここでも県外からのボランティアがたくさん応援に来てくれていた。
 準備をして市内から30分ほどでボランティアセンターに到着。受付、ボランティア保険加入、登録をすませ、10時に待機席へ。高梁市や神戸市社協ボランティア情報センター、美咲町、大阪市社協などからのスタッフが応援に来てくれている.る。
 10時20分に十数人のグループが編成され、マニュアルミッションの運転手を募集され、軽トラの運転手をすることになった。本日の作業は床上浸水したお宅の床剥がしだという。床掃除ではなく、床はがし?そうか、解体作業だな。
床板はぎ
 なぜ床板をはぐのか。床上浸水で床の上のヘドロは掻き出したものの、なかなか乾燥しない。床下にびっしり挿入されているグラスウールの断熱材が水を含んだまま居座っているからだという。断熱材を撤去するためには床板を全部はがさないといけない。
 というわけで、十数人のボランティアほぼ全員が床板剥がしにあたることになった。
 軽トラックを2台、廃棄物運搬用、床板はがし用に六角バール10本、シャベルを10本、そのほかスキやねこぐるまなどを荷台に積載した。大阪からの参加者はスタッフの運搬に自家用車を供出した。10数人が向かった先は、立派な造りの家屋が敷地内に二棟建っているお宅。すでに本宅の二間は床板がはがされていた。80歳近い女性は、初めてボランティアが来訪したときには涙がでるくらいうれしかったと語ってくれた。
 さっそく仕事にとりかかった。かなり綺麗に掃除され、見た目は新築直後のような状況になった床にバールで穴をあける作業の第一発はさすがにためらわれた。
 しばらくして若い男子が、先頭をきって威勢よく床板に打ち込んだ。だが、傷がつくだけで床板はびくともしない。え? うん、まあそうだな、床板だから…。私も同じく続いたが、やはりかすり傷がつくだけ。10回くらいバールを振り下ろしてようやく小さな穴があく程度であった。穴があくと、そこから床板を留めている桟木をつかって梃子の原理で床板をはがすのだが、それがなかなか頭に思い描いたようにいかない。バールは危険なので、むやみにふりまわしてもいけない。全員が注意をはらいながら黙々と作業を行う。ひと間に5人の人員であたった。試行錯誤をしながら、30分ほど続けてようやく床の中心に大きな穴が開く。そこからの進捗は早い。家人の窓の開け閉めのため、四隅に1mほどの床を残す。床板を8割ほどはがすと床下にたまったヘドロが見えてくる。以前、真備町で出会った千葉県議会の職員ボランティアが言っていた、「ゼラチン状になったヘドロ」だ。
 このヘドロ、上からすくうのは難しい。桟木の間を体をくねらせて床下に入った。床下は低いので背中を猫のように丸めて、シャベルでヘドロをすくい、ちり取りに入れ、それをバケツに集めて、土のう袋に入れる。けっこう大変な作業だ。予報最高気温は37℃だが、すでに外気温は42度、お宅の中はさらに温度があがる。床下は周囲がすべてコンクリートでがっちり固められている最近の縁の下なので空気がこもりムッとする。1℃くらい更に高いだろうか。その中で不自然な恰好で、泥をすくう作業はかなり疲れる。ここでも、20分ルールで、10分から20分休憩の休憩を交互にかます。2時間が経過した時点で、頭がぼーとして熱をもってきた。
素晴らしい若者たち
 休憩時、私がふと、「なんだか、頭がぽかぽかするなあ」とつぶやくと、すかさず一人のボランティアの女性が、私の作業服の端をもって「こっちの日陰へ」とひっぱりながら誘導してくれた。その迅速な対応にはこちらが驚いた。本人のほうが、「あ~やっぱりヤバい状態?」てな感じだ。すぐに保冷材を三つ渡してくれ「これをわきの下と首の後ろへ」と指示。「股の間に入れていいですか?」と聞かれ、「え?え? あ、それは、自分でやります」。若い男子は、「これを飲んで下さい」とイオン飲料をくれ、別の若者は、「これ使って下さい」と冷えピタをくれた。とても心優しく気の利く若者たちだ。「何歳ですか?」と聞かれ、「55歳」と答えると「え~」と驚かれた。(見たところ、みんな30歳代までだからね。55のおっさんが混じっているとは夢にも思ってみなかったんだろうね。)女性に「看護師さんですか?」ときくと「介護職です」。やはり専門スキルのなせる技。
 トラックに同乗した球児を思わせるイケメン男子は39歳の千葉から駆けつけてくれたスポーツ業界関係者。千葉からの支援者には毎回出会うので不思議だ。やはり東日本大震災の被災地経験がおおきいのだろうか? 大阪から長距離バスで駆けつけてくれた二人は、真備から東区と県内全域を回っている。この過酷な環境を、関西人のノリで、明るくおしゃべりで笑いとばし、楽しんでいる。「真備では床下にもぐった子が熱中症になりかけたんですわ~」。そうそう、それ今の私のこと(笑)。このノリが大切だね。
 そして大変謙虚でもある。感心したのは、床はぎの作業にもかかわらず、家に入るとき、家人に「土足であがっても宜しいですか?」とちゃんと許可を求める姿勢だった。おごらず、礼儀正しい。
 いつも思う。ボランティアは、外見上はひとさまのためにしていることだが、結局自分を助けているのだと。またそういう姿勢でないと意味がない。人間の善の部分が発揮されそれに直接触れることで人への信頼と尊敬を取り戻してくれる貴重な場だ。
復興作業にはもっと技が使える
床の解体
 作業に関しては改善点が浮かんだ。作業途中から誰かが「チェーンソーがあれ小田川内部の雑木02ばもっと楽かも~」といった。そうそう、と同意。ただ床の撤去には、チェーンソーまでいらない。ホームセンターで売っている電動丸鋸があればいい。電動工具の中でものこぎり関係は経験者が慎重に使う必要があるが、最初に四角の床下観察窓を開け、コンクリート壁と桟木との関係がわかれば、あとは床上にラインを引き、上から鋸をあてて、比較的容易に切り取っていける。このやり方がノウハウとして提供されていないのも、今後の改善課題だ。床をはいだら、桟木は残す必要があるか?このあたりのノウハウも現在はない。桟木もとればいいのではないか?と思うが、要望如何だろう。工務店からのアドアイスも活かしたほうがいい。床の張替のさいにヘドロに汚染された桟木をそのまま使用するとも思えないのだが。
泥だし
 泥だしの方法も合理化策がある。ヘドロになって床にへばりついているヘドロには、再度、高圧洗浄機で水を加え、元のサラサラ状態にもどし、それを、排出用ポンプ(農家のあぜ道などで働いているエンジン付きの例のやつ、である)で吸い出すのである。これは確かに専門業者の技術であるが、簡単な機材さえあれば多少の操作経験があるだけで使える。すでに知人のボランティアが個別に試して成功している。

天災?人災?川の中は荒れ放題

 川の氾濫について話が及ぶと、付近の住民の一人が少し強い口調になった。「この決壊は人災ですよ」と。自治会の関係者は砂川の中に草木が生えている(管理されていない)ことに不安を感じ、行政に伐採を要請し続けていたらしい。だが、その訴えは無視され続けていたという。ある人によると、堤防内の体積が半分になっていると思えるくらい雑木が繁茂していたらしい。
 最近の報道で、流木が河川堤防に与える危険性について指摘されている。おそらく流木が、直進する水流をかきみだし、或は堤防の土をえぐるなどして破堤(堤防の決壊)を促進する役割となることを指しているのだろうか? これが事実だとすれば、河川の中に木や草が生い茂る光景は、流れる流木を押しとどめ水流を不規則にさせたり、それ自体が堤防にダメージを与えるきっかけをつくるかもしれない。堤防の土をかき乱す可能性もあるのではないか? 
 翻って岡山市内をみると、旭川にかかるJR山陽本線の鉄橋には今現在、大きな木がジャングルのように生い茂り、まるで川の中で植林をしているようだ。8月20 日現在全く伐採する気配も見られない。その北を走るJR山陽新幹線の橋脚はうち一本の根元が水流でエグられているが、立ち入り禁止のロープが張られたままである。この橋脚旭川 山陽本線と山陽新幹線の橋脚部の現状02の真下は護岸がコンクリートで固められているが、それ以外は土のままで、しかも堤防は薄い。水面付近のエグレは目でみてもよくわかる。
被災直後の小田川の状況
 被災直後に真備町の小田川を見た時もある異常を感じた。最初に目に入るのは決壊点の補修工事が急ピッチで進んでいる風景だ。だが、それより気になったのは、小田川の川床の中に大量に雑木が生えていることだった。まるでジャングルか、熱帯雨林のマングローブのような密集林になっている。あまりにまとまって川の方向に並行に走っているので川の中が二つに分かれているようにさえ見える。あれでは上流から流れてくる水が、周囲の堤防を削るような不自然な水流をつくることになるのではないか?さらに流木がそれに引っ掛かり回転することになると、破壊力が増すことになるのではないか?
 川の中の雑草雑木という一点だけの問題だが、住民からの伐採整備要請を無視し続けた行政が考えていたことはなんだろうか? これについて住民が行政に問いただす権利はあるし、その努力は公共の福祉への貢献になるかもしれない。「嵐」の二宮君は、被災者の訪問で「声をあげましょう」とよびかけたらしい。まことにその通り。声をあげなければ、人災の責任はとわれず、新たな対策も住民の声を軽視した「事業のための事業」にされてしまう。
 最近、建築物や施設の手入れやメンテナンスの費用を十分に手当てできずにいるのではないか。奇をてらった事業には流行で金をつぎ込むが、足元のインフラの適正なメンテナンスや整備をおろそかにしているのではないか? 新しくできた橋のグリーンベルトが草ぼうぼうになるまで放置され、超ロングな雑草が車道に真横に倒れているみっともない光景を、最近、頻繁に目撃するようになってきた。急ハンドルで雑草を避けないといけない道路ってどうなの? 施設をつくっても、その後の除草の手間さえ惜しみ、点検もサボる。おまけに、そのコストさえ「予算がない」と切り詰めたあげく、現場労働者を低賃金で使っている現状も聞く。よくこれで「働き方改革」や「減災」を語れるものだ。

【追記】治水素人の私が知りえる河川と草木との関係について
 河の内部のことを専門用語で河道[かどう]という。私は河道内の木がすべて問題だと考えるわけではない。その一部は多様な生物の居場所に欠かせない自然そのものだ。(ただ、河道内部の樹木を野鳥の巣作り&住処だとして無条件で肯定する意見には、そもそも河川に生息していなかった高次捕食者である鳥の位置づけを誤っている、とする研究者もいる。) 
 一方、過去の破堤事例で決壊箇所に樹木が繁茂していると分析し管理上の姿勢を反省している自治体の分析データもある。また、場所によっては、草木が繁茂していると堤防の様子が観察できないし、管理もできないという基本的問題が指摘されている。ある自治体は、河川管理の日常点検の優先事項2番目に河道内の植生繁茂の監視をあげている。もちろんそれは、すべての木を切る、という短絡的なものではない。
 また別次元の植生として堤防の外部に植生される水防林がある。これは基本、堤防の外側・川裏に設置されるもので洪水の際、土砂の漏出をできるだけ緩和しようと人工的につくられるものだ。また、樹木の根が堤防の土を締めて頑丈にする効果も提唱されている。(水防林自体、最近はあまり見られないが) また、堤防の地質によっては、樹木が堤防を強化する機能も無くはない。さらに例外的に、堤防などがない原始的河川に関しては、河岸の原生林に土締め効果を見出せるものがある。だが、それでも、原生林を放置してよし、とはなっていない。「適切に管理していかなければならない」と指摘されている。まれな事例で川表(堤防の河側・内側)に竹などを植えることも昔はあったようだが、それにしても背の高いものを植えると、風などで堤防自体を破壊する危険性があるので、しっかり管理する必要があると念を押している。
旭川 山陽本線の現状01 つまり、河道内部では、木の生える場所によっては、堤防そのものへのダメージも警告されているということだ。河道内部の堤防付近の木の生え方によっては、低速流と高速流が複雑に発生することもあるらしい。それが河川の水流にどう影響するのか、未だよくわかっていないようだ。ただ、堤防付近の樹木が、水流で圧迫された場合、それと根っこでつながった堤防の基礎部分を破壊する可能性は当然、指摘されている。(素人でもわかること) BlogPaint
 たとえば、今現在、山陽本線の旭川鉄橋橋脚の周辺に多数伸びている「異様に背の高い」木々が、水流の影響を受けて、橋脚の基礎を破壊する可能性など管理者は考えないのだろうか? 
 そもそも小田川のようにジャングルと化した河道内植生というのは、なんなのだろうか?その思考の中に、適正な管理意識や合理性が果たしてあるのだろうか。BlogPaint
 河道内の草木繁茂やそれにともなう土砂堆積が河川の流下(下流に向けて水が流れる)能力を阻害する可能性などは河川管理者の日常的な懸念事項であるはずだが、私がみた状況は治水の合理性から植生を管理し、熟慮の上、あえて残しているというより、単なる荒れ放題の無管理状態にしか見えない…。

【追記】2018.8.24
 昨夜台風20号が西日本を襲った。気になって小田川の監視カメラをネット経由でチェックしたところ、小田川の小田川の決壊点付近の水害後の草木繁茂状態と草木伐採後決壊点付近を見ることができた。洪水後の草木繁茂状態(写真上)を誰かが注意したのだろうが、いっせいに伐採していた(写真下)。洪水後の7月20日ころに小田川をみた際は、土手からは雑草雑木しか見えなかったが、ようやく水面がみえるようになった。堤防の内側内壁への目視による観察もようやくできる状態となっている。河道内部の草木の異常な繁茂と流下能力、堤防に与える影響について科学的解明がなされているか不明だが、すくなくともこの対比をみると、目に見える川の状態の問題点が、見過ごされてきたか、或いは、指摘されても無視されてきたのではないか、との疑問が募る。

番組のご案内。
 先般、モンゴルで5回目となるノモンハン事件日蒙共同調査(モンゴル防衛研究所との合同)が実施され、NHKが同行取材を行った。
 79年前の戦いは、単なる「過去の悲惨」ではなく、「今」の私たちを、問うている。

NHKスペシャル 『ノモンハン 責任なき戦い』
新聞各紙ラテ欄 NHKスペシャルノモンハン事件紹介02pS
【再放送】
NHK総合  2018年8月19日(日)
午前0時05分~1時18分(18日深夜)
http://www6.nhk.or.jp/special/program/index.html
初回放送(放映済)
NHK総合 2018年8月15日(水) 午後7時30分~8時43分


■以下NHKスペシャルHPより番組ご案内
「79年前、モンゴル東部の大草原で、日ソ両軍が激戦を繰り広げたノモンハン事件。ソ連軍が大量投入した近代兵器を前に、日本は2万人に及ぶ死傷者を出した。作家・司馬遼太郎が「日本人であることが嫌になった」と作品化を断念した、この戦争。情報を軽視した楽観的な見通しや、物量より優先される精神主義など、太平洋戦争でも繰り返される“失敗の本質”が凝縮されていた。しかし軍は、現場の将校には自決を強要した一方で、作戦を主導した関東軍のエリート参謀たちはその後復帰させ、同じ失敗を重ねていった。
今回NHKは、ロシアで2時間に及ぶソ連軍の記録映像を発掘。4Kで精細にスキャンした映像を「AIによる自動カラー化技術」で鮮やかに着色し、戦場の実態を現代によみがえらせる。さらに軍の判断の経緯が証言された、100時間を超える陸軍幹部の肉声テープも入手。敗北はどのようにして隠され、失敗は繰り返されたのか。映像と証言から迫る。」
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180815

虎頭要塞日本側研究センター
http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/kotou-top.htm からのご案内。

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