スターリン時代の大粛清(2千~3千万人規模)の調査などを進める
ロシアの人権団体「メモリアル」などが政治弾圧を受けはじめた。

100年たっても、未だにロシアの市民社会の成長を阻み、
国民を苦しめ続ける、「共産化実験」の後遺症。



2009年 12月24日
ロシアでの国際人権団体がサハロフ人権賞を受賞
【アムネスティインターナショナル】
http://www.amnesty.or.jp/news/2009/1224_1105.html

   ↓↓↓↓↓↓ そして昨年あたりから… ↓↓↓↓↓↓ 
2013年 
03月31日
ロシアでの国際人権団体への相次ぐ強制捜査
ロシア政府:人権団体などのNGO事務所を捜索 規制へ

【毎日新聞 モスクワ大前仁】
    ロシア政府が、外国から資金援助を受ける国内の非政府組織(NGO)の事務所を相次いで捜索するなど本格的な規制に乗り出した。昨年3月の当選から1年が経過したプーチン大統領への批判的な言動を封じる狙いだが、欧米諸国の批判を呼んでいる。

  露連邦検察庁などは3月下旬、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」や、ロシアの人権団体「メモリアル」の事務所を予告なしで訪問。昨年11月に外国の基金を受け取り「政治的な活動」を行うNGOに対し、「外国の代理人」として登録し、活動報告を義務づける法律が施行されたことから、書類の提出などを求めた。ロシアメディアなどによると、100近くの団体が過去1カ月で捜索を受けた模様だ。

  一方で、プーチン大統領は3月30日、市民社会の発展などに貢献しているNGOを対象に、総額約30億ルーブル(約90億円)の支援を拠出する大統領令に署名。NGOが政権の意向に従って活動する場合は援助していく方針を示した。

  一連の動きについて米国務省のヌーランド報道官は3月28日、「前例のない検査を深く憂慮している」と指摘し、さまざまなチャンネルを利用してNGO支援を模索していく意向を表明。ドイツも自国の関係するNGOが対象となったことから、ロシアに抗議している。

  プーチン大統領は11年末の下院選を発端にした反政権運動について、欧米諸国が支援したと糾弾し、米国から支援を受けていた国内のプログラムを昨秋、相次いで閉鎖した。
http://mainichi.jp/select/news/20130401k0000m030065000c.html


「強権的で不実、閉鎖的。市民社会の発展を最大限に妨げた」
【参考資料】  《 地球人間模様 》   人生変えたスターリン批判 83歳行動の人
人権活動家リュドミラ・アレクセーエワ(83)
http://www.47news.jp/47topics/ningenmoyou/77.html
(記事補足→実際には革命直後から1920年代にかけても、強制農業集団化政策などで、膨大な国民が餓死し、路上の死体を人間が食いあさるといったような想像を絶する貧困が全土を覆った。これはスターリン粛清開始前のソビエト革命体制自身の問題点であるが、この方はそれ以後のお生まれのため、記事ではロシア革命直後からの残酷物語の詳細については割愛されている)

   もし...ロシア国民が、社会主義革命直後に「“人民の利益” のためには全土的飢餓と国民の大量死もいたしかた無い」とするイデオロギーの正体を冷静に追及する観察能力をもっていたなら…、もし…物事を多面的にみて、世界は多様な価値観で構成されているものだ、という事実を認める能力を有していたなら…共産党の暴虐をある程度は防止することもでき、ロシアはもっと違った道をたどることができたかもしれない。
    だが残念ながら、一端、共産党を支持するに至った人々が、独善と傲慢の閉じた世界に囚われ、多様な政治的価値観を容認しえない状態に陥る共通した傾向は、東アジアの現状をみても歴然としている。更に、マルクス主義に内在する暴力と独裁への両義的態度は、対極の資本主義が生み出す全体主義的傾向をも実質的に免罪し、相互作用に基づく暴力の拡大・連鎖にも拍車をかける。左右の全体主義の増長は、国内外を問わず、お互いを必要不可欠の存在理由にする。ちょうど現在の日中関係もそれに似た構図を見せているのかもしれない。
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スターリン粛清の調査はロシアでも始まったばかり。それが再び封印されようとしている。
【参考資料】森永ヒ素ミルク中毒事件資料館  WEB版 「新しい自由と民主主義論」
http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/morinaga-hiso-book-new-democracy.htm
著:ノーマン・M・ネイマーク 主題:「スターリンのジェノサイド」訳:根岸隆夫  発行所:株式会社みすず書房 →ホームページ 発行日:2012.8.30 第1刷発行
 「…スターリンとその取り巻きたちは、このすべてのジェノサイド的攻撃をマルクス=レーニン=スターリン主義の教義に結びつけ、どれもおなじような警察、司法手段、司法外手段を使って実行した。そしてこれにはソヴィエト共産党と国家機構の両方が関与した。ボルシェビキ革命がつくりだした権力と支配の驚くべき実行手段として秘密警察を、スターリンは自分の反対者と想像上の潜在的反対者を弾圧するために動員した。1930年代と40年代はじめのスターリン統治の結果として、無実の数百万人が銃殺され、餓死させられ、強制収容所や強制移住地で死んでいった。今や、この物語はジェノサイド史のなかで大きな一章を割く時が熟している。…」
 ボルシェビズム/レーニン主義共産党の内部統制の別名「民主集中制」のおぞましいエッセンスが未だに大手を振るっているアジア世界で、日本共産党や各国共産党のDNAを考える上で不可欠の書。しかもコンパクトにまとめられている。
 ネイマークは、国連ジェノサイド条約が大国の思惑から「政治・社会集団への大量虐殺」をジェノサイドのカテゴリーから除外したこと、ナチスのユダヤ人への6百万人規模のジェノサイドへの配慮から積極的に取り上げられないできたこと(粛清の規模がナチスをはるかに凌ぐから)を指摘する。彼は、これらにより今日まで積み残されている深刻な歴史認識上の問題を提起した。
 スターリンは、ナチスとの「大祖国戦争」で勝利したという「錦の御旗」で、ナチを凌ぐ大量虐殺を正当化していた。連合国の一員の仲間入りしたことも、ソビエトの異常性に見て見ぬ振りをする手助けになった。
    ちなみにこのロジックは資本主義国にわずかに残存する共産党が今も平然と口にするものだ。曰く「軍国主義に反対した歴史を持つ共産党への批判は決して許さない」。これをもって、軍国主義に反対しつつ同時に共産党の独裁主義をも批判する市民に対しては敵対勢力に対する以上に執拗に攻撃する…。いや、戦前も一般市民のほうがよほどファシズムと対決し、一方、共産党はソビエトの配下としてコミンテルンの指示に忠実に従っていただけにすぎない側面が強いのだが…。にも関わらず、共産党以外の一般市民は軍国主義の前にすべて無力だったかのように歴史を大きく捻じ曲げる努力も彼らの重要な生業となっている。全ては彼らの「現状」を合理化するレトリックに過ぎない。
 いずれにしても、スターリン主義による大粛清は、最近ようやくジェノサイド史のテーマとして遡上にのぼり始めたにすぎないという、驚くべき現実に読者は直面する。


ソビエトによるポーランド指導階級の抹殺
【参考資料】  映画『カチンの森』予告編 You Yube
http://www.youtube.com/watch?v=1o6yWgR2at8
 ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の「カチンの森」。
 戦史研究者には良く知られているこの事件も、一般的な認知は低く、少し極端な言い方をすれば、「忘れられた国家の悲劇」ともいえる。
カチンの森虐殺事件とは、ソ連による史上まれにみる他国の正規軍兵士(しかも戦いをやめた兵士=捕虜)へのアウシュビッツ的な政治的抹殺行為です。
 ソ連は、ナチスドイツとしめし合わせて隣国ポーランドを侵略し、実際に街頭に宣伝カーを出して、「ソ連は平和のためにドイツからポーランドを解放しにきた。皆さんの味方だ。抵抗しても無駄だ。ま、ちょっと集まれ」というプロパガンダでポーランド軍将校を全部収容所へ押し込め、ベルトコンベアー方式で、その全部を虐殺した。一方の悪役を強調して、自らの悪徳性を隠蔽・美化し、民衆の警戒心を麻痺させながら同様の悪行を冷酷に実行してはばからない…。実に姑息でずる賢い宣伝煽動手法だ。結果、殺されたポーランド軍将校の捕虜とポーランド社会の指導層の人々は2万2千人。それ以外の一般兵士の抹殺を含めると多すぎてカウントできないらしい。連行された兵士と生還した兵士の引き算の差が10万人を越えるという計算もある。
 戦闘での死亡ではなく、捕虜として集めた他国の無力な兵士を政治的抹殺という手法でこれだけ大量にまとめて殺したのは、近現代では、ソ連共産党が唯一最大ではなかろうか? 専門の施設までつくって、家畜未満への冷酷さでもって大量に処刑されたポーランドの将校達の無念の思いは、天空を覆い、永遠に消えることはない。ナチのアウシュビッツの犠牲者。そしてシベリア抑留の犠牲者とも重なる。
 ヨーロッパ史、いや世界史でこの70年隠蔽されてきた歴史の暗部を抉り出した大作である。この映画をみれば、一見勇ましく見える全体主義的イデオロギーに浮かれて快感を得たり、共産主義イデオロギーが反権力&反体制のカケラだと信じている信奉者の底知れぬ愚かさがすぐに理解できる。
  そういう意味で日本人は、ヨーロッパが先行的に経験した悲劇をもっと学ぶ必要があろう。
BOOK  
 『カチンの森~ポーランド指導階級の抹殺~』みすず書房
NHK-ETV特集 アンジェイ・ワイダ「祖国 ポーランドを撮り続けた男」
http://www.youtube.com/watch?v=JmlJnS8-0fM ~人生の最後にカティンを撮る理由~

600万人分の監視記録
【参考資料】 スターリン主義/KGB=ナチズム/ゲシュタポ=東ドイツ秘密警察/シュタージ
 かつて、ヒトラーが率いる国家社会主義ドイツ労働者党は、党内が独裁であったにもかかわらず、大衆の不満をたくみに利用しつつ、合法的な選挙を通じて第一党となり、ドイツ社会全体にその内部統制=全体主義的マインドコントロールイデオロギーによる独裁制を一気に拡大した。
  当時のドイツ共産党とても同様で、彼らもプロレタリア独裁(執権と言い換えようが同じこと)の思想であり、当時の多数労働者の党である社会民主党を徹底的に攻撃し、自らのセクト的利害のみを徹底追及、そればかりか、交通ストライキなどではナチスと共闘することも厭わなかった。後にナチスが共産党を弾圧したことをもって、両者は異質であるかのように表現する向きもいるが、この見方はきわめて表層的である。両者は、政治手法的には、極めて似通っており、ナチの幹部はドイツ共産党の手法を賛美し、それを真似たことが指摘されている。
  だからかどうか、ドイツではナチスも認めないが、同時に共産党も事実上存在しない。共産党は解散し、ドイツ統一後に、その残党は、「ドイツ左翼党」へ合流した。
  しかし、この「左翼党」は、現在もおぞましい問題を抱えている。
  同党には、拷問と密告で悪名高い旧東ドイツ秘密警察「シュタージ」と、旧東ドイツの社会主義統一党のメンバーが紛れ込んで隠然たる影響力を行使している。それらが、失業者と不満勢力の囲い込みを通じて、ドイツ社会全体にその息を吹き返そうとしている。
  実際、「左翼党はかつてのナチスと同じ」として、政党活動そのものの禁止を求める旧東ドイツの市民も多い。かつてのヴァイマール共和制を崩壊に導いた「同じ穴のムジナ」として、また、市民への残酷な弾圧を行った秘密警察国家の復活に繋がる(当然、左翼党は、表向きそれらを否定しているが)勢力として、厳重な監視下に置かれている。

 東ドイツ市民へのスパイ密告制度と拷問弾圧支配を続けたシュタージ(国家保安省)は、人口一人当たり換算で、ナチスの秘密警察である「ゲシュタポ」の12倍、旧ソ連秘密警察「KGB」の35倍の規模のスパイ監視網を構築していた。
  しかも、これは正規職員によるもので、市民の密告奨励によるものは換算されていない。スターリン主義=民主集中制の残滓は、社会が近代化すればするほど、市民同士をスパイとしてお互いに対立させて支配しようとする強烈な管理社会に行き着くことが明らかにされている。ドイツでは、近年「市民スパイ・密告」による一般市民への監視記録・600万人分が公開され、衝撃をもたらしている。
(閲覧は自由だが、この規模の監視体制の下では友人や親戚など近親者がスパイをしていたケースが発覚するため、その事実を知る事自体を躊躇う市民が少なくないという。民主集中制という名の全体主義体制が愛好する監視社会の後遺症は世代を越えて人間を苦しめ続ける。)


 ちなみにわが国でも異論を唱える市民への監視記録を配布するような「自称:民主団体」なるものが普通に存在する。

http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/yamadasi-jinkenkyusai-mousitatejiken.jpg
http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/jinnkennkyuusai.htm

 被害者から頼まれ、善意の気持ちから被害者を助けた支援の一市民が、「被害者団体」のあり方を批判すると、
「被害者団体」が機関紙の一面全部を使って一市民を名指ししてウソ羅列の徹底的な人身攻撃をした。
   結局、市民から告訴された「被害者団体」は名誉毀損の不法行為で有罪判決が確定した。
http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/nose-sosyou-stage2-kousosin.htm


映画 『クロッシング』 予告編
http://www.youtube.com/watch?v=ZA4H2O7D1qQ
脱北者の逃避行ルートをリアルに追った人権侵害告発映画